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 星垂る(ホタル)飛ぶ  

                           垂水 薫

照葉樹」2号(2006年11月)

推薦 よこい隆(木曜日)   

 

 

 蒸し暑い夜に蛍は飛ぶ。  夜風が涼しいから蛍を見に行こうと私が誘うと、あなたは眉をひそめて、そう言いましたね。蛍が飛ぶ夜とは、むしむしする今宵のような夜のことでしょうか。

 

 浅い川です。ずいぶん上流にまで来てしまいました。  生ぬるい水が、ふくらはぎで微かな音をたてています。水の流れは速いのですが、川幅が広いせいで、それほどの勢いは感じません。下流辺りでは、たくさんの人が足場をなんとか確保して、蛍見物を楽しんでいることでしょう。人声が、水音に混じって微かに聞こえてきます。  この場所にいる私の周りには誰もいません。暗いので見えないのではありません。ほんとに誰もいません。だって、ここは川辺ではなく、川の中そのものですから。  もうすぐ九時になるかしら。だとすると、私は駐車場から小一時間ほどもかけて、ゆっくりとここまで歩んできたことになります。  水に浸された足は生暖かく、空気も蒸しているというのに、体はとても寒い。歯の根が合いません。私は両腕で自分の胸を抱きかかえています。やせた私の胸を抱く人は誰もいない。

 

 蛍が宙を舞い始めたと聞いて、たくさんの人たちと同様、私も蜜を求める虫のように、この村を目指して車を走らせ、やってきました。  今どき珍しい木造校舎の小学校の校庭に車を止め、ハッピを着た村の青年から案内地図を手渡されて、蛍が飛ぶ箇所を教えてもらいました。いま居る場所の、かなり下流です。そう、人声がにぎやかな辺り。

 

 ある種の生き物は、環境の悪化が進むと地球から消えると聞きました。多くの人に愛されている蛍は、いつまで飛べるでしょう。  二ヶ月前、突如として眼球の中に現れた私だけの蛍は、時と場所を選ばず、いつも飛んでいます。お医者さまが言われるには、それほどの刻を待たずに姿を消すそうです。全視界とともに、一匹残らず消えてしまうそうです。  目が見えるうちに綺麗なものを見ておこう、たくさん見て頭に刻み込んでおこう、と思いたち、北海道を皮切りに日本全県を見て廻りました。胸に残ったものが、いっぱい増えました。あと、足を運んでいないのは、国後島と伊豆諸島くらいかしら。もちろん、その他こまごました地方にも、行ってないところは数多くありますけど。  海外には行きませんでした。知人の話によると、世界は想像している以上に広いそうです。一度行くと、また行きたくなる。一回見ると、何回も見たくなるそうです。世界を廻るほどの時間もお金も私には残されていません。何ごとであれ悔いを残すのは辛いもの。だから、最初から見ないでおこう。そう心に決めました。

 

 蛍の語源を、星垂る、とする説があり、オスとメスが相手を求め合って光っている。  こう言ったのは、どなただったかしら。  美しいものを見るたびにペンを握ったあなたへの手紙は、三百通を越えました。出すあてはありません。出したところで読んでもらえないでしょう。ですから、ただ書き続けるだけの手紙です。綴った字を見て確かめ、読んだ文を目から体に沁み込ませます。そうすることによって、手紙があなたの元に届く気がするのです。  全霊であなたに話しかけ、唇であなたの名を口ずさむことは、目が見えなくなってから先でも、ずっと出来ることです。

 

 あなたは、いつも私の側にいます。あなたが私の夫だったときより、はるかに寄り添ってくれています。間違いました。私が寄り添っていると言い直さなければなりません。  今ほどあなたと一つになっていると思ったことはありません。今なら、あなたと解け合えそうです。  いえ、心配しないで。申し分ない妻に出逢い、四人もの子供の父親になったあなたに取り入ろうなんてしませんから。取り乱して家に押し掛けたりもしません。もちろん電話も。

 

 我慢出来ずに何もかも清算しようと決心したのは、私、でしたよね。えっ。それとも、あなただったかしら。頭の中がこんがらがって、はっきりと思い出せません。あのころの私の気持ち。うわぁんわぁんとエコーが響き、気付くと一人になっていたのでした。どうすれば良いか途方に暮れました。他方で、あなたと別れて安堵もしていました。  今は、当時よりもっと訳が分からなくなっています。あのとき並べて考えた数少ない選択肢のこと。流されるように選び取ってしまった一つの選択肢と、これから先のこと。

 

 あの子。あなたと私の一人息子。私たち親の都合で、そっちに行ったり、こっちに来たりと、落ち着かない生活を強いてしまいました。あの子は口にこそ出しませんでしたが、両親から離れ、日本を離れて、ほっとしたことでしょう。出国から五年が経ちました。あの子も三十歳。私に連絡はありません。海を越えた遠い国に住み、伴侶を見つけたかしら。  こうして考えると、解かれたしがらみを未だに追い求めているのは、私だけですね。あれほど嫌っていたしがらみを、体に引き寄せ巻き付けて頬ずりしているだなんて。  蛍が、闇の中で激しく乱舞します。悪い夢を見ているみたい。これは言うまでもなく、私の目の中の、まだ消えない蛍たちです。

 

 車を停めてこの場所に歩いて来る途中で、笹を手にした子ども連れの一家を見かけました。三歳ほどの男の子が提げているプラスチックのカゴの中で、からめ取られて囚われた運の悪い光たちが四つ五つ揺れています。  男の子より少し大きい七歳ほどに見える女の子が手にした笹にも、数個の光が点在し、女の子の歩く足の動きと手の動きに合わせて、ゆらゆらと呼吸をするように光も揺れるのです。まるで自由に空を飛んでいるよう。行き交う人々は、蛍と子どもに目を奪われます。  カゴを提げた男の子が爪先立って、女の子の持つ笹に手を伸ばし、執拗に騒ぎます。 「欲しいよぉ、欲しい。ちょうだいよぉ」  笹は高くかかげられ、蛍も高く光ります。  通りすがりの大きい女の子が、連れのおとなを見上げて呟きました。 「蛍を獲ってはいけないのに」  母親と思しい連れの女性は、同意したしるしに、顎に力を込めて頷き返しました。そのとき久しぶりに、蛍狩りという言葉を思い起こしたのです。日本のどこにでも蛍がいた時代に、蛍は笹を振って狩り取るものでした。

 

 私たち、ついに一度も蛍を見には行きませんでしたね。  どちらかが行こうと誘うと、さえぎる事情が必ず起きて行けなくなってしまったのは、どうすることも出来ない二人の縁だったのでしょうか。 「蛍狩りに行こう」と私が誘うと、 「僕は忙しいのに、君は優雅だな」と、あなたは冷えた顔でそっぽを向くのでした。  子どもが産まれてからも、あなたは、 「パパはお仕事だから」と、私ではなく赤ん坊に言ってきかせ、心持ちすまなさそうに微笑んで頷いてみせましたね。  煩雑な生活は望んでいないと常々あなたは言っていました。あなた同様、私だって望んではいませんでした。気がつくと、あなたの身の回りにあった入り組んだ人間関係はじめ、たくさんの四方山ごとが、私の両手に移っていたのでした。

 

 蛍狩りに誘ってくれたのは二度でしたね。長い無言電話がかかってきた日の夕方と、私が家を出ていくことになった日の前夜。二度とも、じめじめと降り続いた雨がやっと止んで、大気が耐えがたいほど蒸している夜でした。

 

 一度目の誘いは、日曜日でした。  あなたは朝から一日中、気分が沈んでいる様子でした。五歳になった息子が話しかけても無反応でした。気がかりなことがあったのでしょうか。いつもなら、息子にだけは屈託のない明るい笑顔を向けるのに。なぜか私も落ち着きませんでした。だから努めてはしゃいでみせました。長い一日でした。  電話がかかってきたのは、気を遣うのに疲れきった私が話しかけるのを諦めて、息子も退屈に浸りきって眠ってしまい、外に降り注ぐ雨の音だけが部屋に響いていた夕刻のことでした。  もしもし、と応じた私に、受話器は何も答えませんでした。それどころか長い沈黙。この人は、誰だろう。  雨の音は単調に降り続いていて、私は、手にした受話器がしだいに邪悪なものへと変わっていくのを覚えました。耐え難いまでに胸の心拍数が増すのを感じました。喉の奥に冷たい塊がゆっくりと生まれて、この人は私の夫と話したがっていると、何の脈絡もなく察したのです。  受話器を持ったまま固まっている私にわずかな視線を向けることもなく、あなたは出掛けていきました。小雨になったとはいえ、まだ降り続いている雨の中を。  私は部屋で独り、電話線を伝って流れ込んでくるものの存在を見つめていました。受話器を握る手がじっとりと汗ばみ、やがて私は、自分の胸の鼓動が電話線の向こうで電波を共有している人にも伝わっていったと、確かに感じ取りました。  そして、出掛けていたあなたが晴れ晴れとした顔で帰ってきて言ったのです。 「雨は止んだ。こんな夜にこそ蛍がいっぱい飛ぶぞ。見に行こう」  私は黙ってあなたを見つめたのでした。そして心の中で呟いたのです。蛍を見に行こうと誘っているこの人は誰だろう、私の知らない人だ、と。  愛おしいと思い続けていた人に対し、次の一瞬での感情の裏返し。瞬きする間もないほどの一瞬でした。  今宵、たとえ蛍が飛んだとしても、その姿は見たくもない。  身の周りにいる全ての生き物を、私はかたくなに拒んだのでした。

 

 二度目に誘ってくれたのは、私が家を出た日でした。 何曜日だったかしら。覚えていません。曜日どころか、その他のこまごまとしたことさえも。だのに、あなたが蛍狩りに誘ったときのことだけは、あの日の抜け落ちてしまった全ての記憶を補うかのように、おかしいくらい鮮明に覚えているのです。 「今まで見たことがなかった君に、最後に蛍を見せてあげよう」  そう言った瞬間の、あなたの眉。瞳の奥。わずかに歪んだ口もと。最後に吐いた長い溜め息と、それを受け止めた部屋の空気。  首を横に振って口を閉ざしたきりの私に、あなたは一言つぶやきましたね。  聞き取れませんでした、その言葉。何と言ったのかしら。冷たい奴、それとも、強情な女、あるいは。  聞き返すこともなく、私は一人で家を出ていきました。  その後、あなたも子どもを連れて、あのマンションを去ったのですね。積み重ねた時間も空間も将来の夢も、何とあっけなく消え去るのでしょう。

 

 ずいぶん後に、あなたの友人から聞かされました。  無言電話がかかってきた夕暮れに、あいつは慈しんだ人と別れる決心をしたと。だから君は夫婦別れをすることはなかったのだと。そういう問題ではない、と私はつぶやいて、友人の顔の後ろに重なって見えるあなたの面影を、じっと見つめました。  やがて、あなたは新しい女性と出会い、四人の子の父親になったと、これは噂で知ったのでした。  あなたの再婚を知ったとき、初めて私は、あの夜、あなたと私と息子の三人で蛍を見に行かなかったことを悔いました。  今は、夢にも現にも見えるのです。群れて漂う蛍の群生の中に、あなたと私とあの子の三人が揃って、それぞれの手に合う大中小の笹をささげて差し出している姿を。ゆらりゆらりと笹を払うと、私の生まれ故郷の北国の雪が舞い上がるように、蛍たちがゆらめきます。  笹に掛かった蛍に、あおられる蛍。  蛍たちが舞う様は、まさに光の雪。

 

 駐車場から川までやって来る途中で、浴衣を着た若い人も見かけましたよ。日焼けサロンで灼いたのか、黒い肌に金髪頭を振り立てて、金魚模様の浴衣を身につけて。時折首をひねって結び帯に目をやりながら、数人と連れ立ち、大声でさんざめきながら歩いていました。金魚のような古びた模様がまだ残っていたかと、思わず見とれてしまいました。  子供時代、私も同じような金魚模様の浴衣を着せてもらった記憶があります。目にも鮮やかな真っ赤な金魚が白地に映えて、身頃に五匹、袖に二匹、泳いでいました。  淡雪みたいに、すぐに終ってしまう北国の短い夏の宵に、手を引かれて花火見物に出かけました。赤い金魚と浴衣に似合う黄色い扱帯に心がときめき、首を何度も後ろにひねっては背中越しに、帯の蝶々結びを眺めたものでした。時代は変わっても、ふとしたしぐさの光景は変わらないのですね。  腹に響く火薬の炸裂音と、夜空に開く大輪の炎の菊花。  父も、母も、浴衣も、扱帯も、花火も。ずいぶん遠い昔のことです。

 

 次にすれ違ったのです。ざわめき歩く人の波に、孫でしょうか曾孫でしょうか、幼子二人を連れた七十歳ほどの老夫婦。 「待って、待って。そげん二人でしがみついたら、じいちゃん、転んでまう」  おじいさんの弾んだ声が、地上五十センチの場所から聞こえてきました。二、三歳くらいの幼児二人に、左右から首に抱きつかれて立ち上がりきれず、その場でしゃがみ込んでいるのです。人と車の流れが、そこで左右に分かれていました。三人に寄り添って立っているのは、温和な表情を浮かべたおばあさん。  あと十年も経つと、私たち、あの人たちの年頃になると思い、我しれず見とれてしまいました。  ああ、おかしい。別れた夫婦がよりを戻すことは世間にざらにあるといっても、あなたが、二十五年も前に別れた女房を情感込めて思い出すなんてこと、ありませんよねえ。  たとえ歳だけが同年配になっても、あなたと私があの老夫婦のように、二人の血を体に脈打たせている孫を慈しみながら寄り添うなんてことは、決して無いのでした。  こんな判りきったことを考えてしまうなんて。たった今まで私の周りで僅かに飛んでいた蛍までもが、いつの間にか姿を消してしまったせいですね。

 

 川はしだいに流れを速めてきました。足から体内に染み込んできた水が、血の流れに変わって、上へ上へと這い上っていき、やがて体中の血がしだいに頭に集まってきました。止めどなく脳へと満ちてきた血水が今にも耳から溢れてきそうです。  しびれた頭で考えています。あなたと暮らし始めた頃のこと。  若かったあの頃は、夜は夜、朝は朝、光は光、闇は闇の意味を持っていました。夜は眠り、朝は目覚める。光の中で見つめ合い、闇の中では抱き合う。そうでしたよね。あなたが求めていたのは私。私が求めていたのは、あなた。互いを求め合っていました。  あなたと暮らそうと、私は父を捨てました。  子が親を捨てるのは、世間によくある話。人の道に外れてはいるけれど、それでも親が子を捨てるのとは大違い。こんな逃げ口上で自分に言い訳した私でした。  激しく愛し合って迎えた朝、あなたの肩先に、父とよく似たこげ茶色の日焼け痕を見つけて、心がうずきました。あまりの偶然におびえて顔色をなくした私に、こんな日焼け痕は誰にだってあるさと、あなたは微笑み軽く受け流してくれましたね。そんな屈託のなさが、あのころの私には大きな慰めでした。

 

 あなたと別れて独りで暮らし始めた私に、父は沈黙を守り通しました。生きている父が私を見ることはありませんでした。そして私も。  老いて息を引き取る前に、父が母に言ったそうです。  お前さんが産んでくれた俺の子は、どこまでも姿勢の良い娘だった。産んでくれてありがとうと。 「……姿勢の良い娘」  葬儀の後、一間きりの私の住まいにやってきた母の前で、私は涙も流せず、父の残してくれた言葉を何度もつぶやきながら呆然と立ち尽くしていました。  いつも私は、人生の肝心な節目で、自分の持っている最も大切なものを捨ててしまう気がします。父を捨て、あなたを捨てました。私は何のために選択してきたのでしょう。  それでも私には、この生き方しかできなかったのですね。だから、こうして大切な人から次々と去られながらも今は、それほどの痛みを感じなくなっているはずです。  私が家を出た日、あなたがつぶやいた言葉は、冷たい奴、だったのでしょうか。

 

 流木がふくらはぎに当たり、こくりと底がえぐれて足元が削られました。体が傾き、急いで足を踏みかえ体勢を整えます。気付かないうちに川が深くなっていました。水が太ももにまで達しています。  違う。私は目を見張りました。見直しました。足先が消えています。どこにもありません。急に溶けて無くなったみたい。  先ほどまで爪だったところで、光るものがあります。なんと空き缶。川底一面に煌めいているのは、敷き詰められた空き缶です。こんなに暗い水中が見えるはずなどないのに。  蛍が棲む川です。きれい過ぎる川には蛍が棲めないけれど、いくらなんでも川底で、これほどたくさんの空き缶が光るはずはありません。それが証拠に、岸とおぼしい辺りに目を転じても、きらめく光はついてきます。あぁ分かりました。これは空き缶ではなく、私の蛍たちです。  だから、足が溶けたなんて気の迷いですね。溶けてしまった足に替わって、今度は腰が川底に触れているのも、感覚が一人歩きしているだけです。冬でもないのに体が寒さで痺れているのも、感じ方のせいです。  足先はあるはずです。感じないことを感じることが出来るから。もし足が無くなっていれば、無いという感覚でさえ味わえないはずですよね。

 

 闇は、更に深くなっています。耳の中を水が流れていきます。また川底が、こくりと胸元でえぐれました。目の前に差し延べた両手を見つめます。私の手。よく見えます。手の形をした寒天が融けていくみたい。水が、手を洗っているのです。  流れていく水藻も見えます。月の出ていない夜なのに、はっきりと見えます。ゆらゆらと漂い流れていく藻は、あなたと別れてから腰まで伸ばし続けた私の髪の毛。  全て溶け終わったようです、私の体。蛍が飛んでいない漆黒の川面に、溶け残った目だけが水に浮いて流れていきます。  見上げる天空には無限の闇だけ。私は。いえ、私の目は、今や音まで聴き始めました。  いっせいに辺りが明るくなって、あまりの眩さに私は目を閉じ、開け、何度も瞬きを繰り返しています。花火が炸裂して、そのまま夜空に貼り付いたようです。  あまりの明るさにおののいているうち、辺りは闇に戻ってしまいました。あの煌めきは蛍には見えません。それほど明るすぎました。でも蛍でないなら何だったのでしょう。

 

 蛍は夜の八時からと十時からとの二回浮遊する。こう言ったのも、あなたかしら。  ロウソクは、消える前の一瞬に明るく燃え上がるそうです。蛍もそうですか。光るものどうし、やはり蛍も命が消える前の一瞬に、より明るい光を放つのでしょうか。  闇の中でゆらり。明るい灯が、ひとつ点りました。とても小さく、とても鮮やかに見えます。あれは私の目。いえ、目の中の蛍かしら。それとも、二度目の浮遊の開幕で出てきた気の早い本物の蛍でしょうか。  生き物は皆、この世に生を受けて、短い一瞬を大切に生きているのですね。見つめて下さいな、あなた。ひとつの灯りが、たった今ひときわ明るくきらめいて。

 

 

 

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